“定年後もモテたい”とギラつくシニア世代の男性をターゲットにした雑誌『GG』(6月23日創刊)が、議論を呼んでいます。



 きっかけは、編集長の岸田一郎氏(『LEON』元編集長)のインタビュー(『週刊ポスト』 6月16日号)。創刊号に掲載される“美術館ナンパ”について語ったところネットで批判が殺到し、炎上してしまったのです。内容はこんな感じ。



 1人で美術館に来ている若い女子をオトしたければ、アートにまつわるうんちくを披露しろ。それで仲良くなったら、いっしょに焼肉に行ってホルモンの部位を説明するついでにボディタッチまでできてしまうかも、とのこと。



<『イチボは?』と聞かれたらしめたもの。(体のこのあたり)といいながらお尻をツンツンできますから(笑い)>だそうです。



(筆者註・岸田氏本人はこのような発言はしてないとし、インタビュアーが言葉を作ったと主張しています)



 これに女性たちは「全国のモテないジジイが本気にするからやめて!」と(ネット上で)悲鳴をあげ、男性からも「同じ男であることが情けなくなる」との声があがりました。



◆岸田一郎氏の“美術館ナンパ”と、米国『Esquire』流のモテ術



 もっとも、岸田氏は「シャレのひとつですから」と意に介していない様子。確かにそこまで目くじら立てなくてもいいのにとは思います。でもやっぱりジョークだったとしても、ちょっと貧乏臭いような。筆者(30代・男)から見ても、昭和を引きずっているというか……。



 というわけで、海外の男性誌ではどのように“モテ道”が説かれているのか調べたところ、特に『Esquire』誌の記事や書籍が参考になりました。



 がっつき気味の日本のメンズ誌とは対照的に、女性との適切な距離を保つマナーを紹介しているからなのですね。同じ笑いでも哀愁が漂っていて、“そんな切なさも飲みこむのが紳士なのだ”といった具合。



 ここからは、そんな“『Esquire』流、紳士の作法”をいくつかご紹介しましょう。



◆米国『Esquire』流、紳士のモテ術



 まずはテキサス出身のシンガーソングライターで、あのジュリア・ロバーツが惚れた男、ライル・ラヴェットが語る掟。



●女性の年齢や体重を想像してはいけない



 たとえば、「女性の年齢や体重を想像してはいけない」とか、「女性の話をさえぎってはいけない。話が終わるまでただ黙って聞いていろ」など。自分を売り込みたいばかりに、女性のごきげんを損ねるなどもってのほかだってことですよね。



●女性に命令してはいけない。訊け!



 だから、ラヴェット氏はうんちく全開の“美術館ナンパ”と真逆のことを説くのです。



<女性の分まで勝手に注文する男、あれは一体何なんだ? そんなことをしてはいけない。女性に何を食べるべきか指図するやつもいるって? 女性に命令してはいけない。訊け。その結果、どんな答えが返ってこようとも、感謝の気持ちとともに聞き入れること。>



(Lyle Lovett – Rules from a Texas Gentleman Esquire 2008年1月22日 筆者訳)



 こうしたラヴェット氏の姿勢には『Esquire』誌の前編集長、デイヴィッド・グレンジャー氏もいたく感銘を受けた様子。紳士であるためのアドバイスをまとめたハンドブック『How to Be a Man』の序文でも彼の言動に触れています。



 ラヴェット氏がそこまでして女性に気を遣うのは、決して自分がイケメンではないからだというのです。使える手は何でも使って、自分をよりよく見せるべきなのだと。



 つまり、女性をオトすオトさない以前に、他人から見て気持ちのよい男性であることに気を配れと言っているのですね。そのためには自分がどうしたいかよりも、まず相手がどうしてほしいのかをよく観察してから動けというわけです。



◆“Esquire man”になるための掟



 そんな抑制の美学を説く『How to Be a Man』も、基本的にはシャレなのです。



 たとえば女性に洋服を買ってやる際の心得も、クレジットカードと女性の服のサイズを控えておけと前置きしつつ、結論は「やめとけ」と一言。何をプレゼントしたところで喜ばれないということでしょうか。



●女性がヘアスタイルを変えたら、とりあえず「ワオ」



 女性がヘアスタイルを変えたときに言うべきフレーズはこんな具合。



 たとえば色を変えた場合の褒め言葉にも、2パターンある。本当にそう思っている場合と、オッパイとお尻にばかり目が行ってしまうのを気付かれたくないときに言う、「その色、最高だよ」があるとアドバイスしています。



 もし似合ってるんだかどうかよく分からない場合には、ただ「ワオ」と言いなさいと。



●彼女が人前でおならをしたら「俺です」と名乗り出よ



 シチュエーション別のトラブルシューティングも味わい深い。



 カクテルパーティーで、彼女がおならをしてしまった場合、どう振る舞ったらいいでしょう? それが付き合い始めのころだったら、何も起きなかったふりをして、もう一杯お酒をごちそうしなさい。長く交際している女性だったら、勇気を振り絞って「俺です」と名乗り出ろとのことです。



 これはけっこう真面目かもしれませんね。



●彼女が風邪をひいたら、身体を拭いてあげなさい



 あとは、彼女が風邪などひいてしまったときに紳士がすべきことのリストもいいですよ。



 弱っているときは映画の評価基準が低いから、とにかくなんでもいからDVDをかきあつめておけとか、食べ物に関してはソーダクラッカーとジンジャーエールがあれば間違いなし。



 それにおしぼりで身体を拭いて清潔にしてあげれば、あなたのことを忘れないだろうと。



◆アメリカでも、そういう紳士は絶滅危惧種?



 もちろんこれを全部本気にしてやる必要はないのですが、でも心構えとしては結構本質を突いていると思いませんか?



 笑えるんだけど、『GG』とは違ってちゃんと相手と向き合ったやり取りって感じですよね。日本でも若いうちからこういうことを教えるべきなのかもしれませんね。



 とはいえ、『Esquire』が思い描くような男性像は本国でも絶滅危惧種なのだといいます。現編集長のジェイ・フィールデンは、こう語っています。



「トランプ政権のバノン上級顧問みたいな極右勢力に対抗するのがピンクの帽子をかぶった女性団体である時代において、教養豊かで中立的なレイモンド・カーヴァー風の紳士、つまりエスクワイアが長年に渡って理想としてきた男性像が入りこむ余地があるのかどうか、かなり難しいところだ」



(The ‘Esquire Man’ Is Dead. Long Live the ‘Esquire Man.’



The New York Times 2017年2月4日配信、筆者訳)



 こちらはこちらで、“イチボをツンツン”とは違った悩みがあるようです。